あるところにお母さんヤギと7匹の子ヤギが暮らしていました。
ある日のこと──
お母さんヤギは街へ出かけることになり、子ヤギたちにいいました。
「誰が来ても、決してドアを開けてはいけないよ」
そこへ狼がやって来てドアを叩きます。「お母さんですよ」
しかし、がらがら声のせいで子ヤギたちはすぐに狼だと見破ります。
そこで狼は店でチョークを買い、それを頬張って声を変え、
再びドアをノックします。「お母さんですよ」
子ヤギはドアの隙間から足を見せてほしいとたのむ。
狼の足は真っ黒だったのでまたも見破られてしまう...。
次に狼は小麦粉を足に塗りたくって真っ白にして言います。「お母さんですよ」
ドアの隙間から白い足を見た子ヤギたちは大喜びでドアを開けます。
間一髪、柱時計の中に身を潜めた末っ子のヤギをのぞいて皆、狼に丸呑みされてしまいます。
子ヤギを6匹も丸呑みにして腹一杯になった狼はそのまま眠りこけてしまう。
そこへお母さんヤギが帰って来ます。ここから始まるお母さんヤギの復讐劇!
どうぞオーディオブックでお楽しみください!
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■楠山正雄(くすやま・まさお)
東京銀座生まれ(1884~1950)。早稲田大学時代に坪内逍遙や島村抱月に師事。
大学卒業後の1907(明治40)年、早稲田文学社に入り編集者としてのキャリアを始める。
そして読売新聞社を経て、1910(明治43)年、冨山房に入社。そこで「新日本」の
編集主任として励むかたわら、一方で逍遙の「文芸協会」に参加し、評論あるいは
翻訳劇脚本家として活躍する。文芸協会解散後も抱月の芸術座に続いて参加し、
しばらく編集者と演劇人の二足のわらじを履いていたが、1915(大正4)年、
冨山房社長の命を受け、「模範家庭文庫」の担当となる。親交のあった岡本帰一に
ヴィジュアル面を託し、他人の原稿を編集するうち、児童文芸への意識が高まっていく。
やがて自らも文庫の執筆に手を出し、また児童向けの創作や翻訳も意欲的に行う。